中古で、綺麗な表紙と題名に魅かれて購入。105円でした。
いい買い物……
この著者の作品は、今のところこれしかもってないのですが。
他の作品も読んでみたくなります。
この独特の文体、文章の感触……そこから喚起されるイメージはたまりません。
夢現で読みたい本かな。

表題作をはじめ、合計四つほどの短編がはいっております。
どれも不思議な気分になります。

・表題作が一番好きかもしれない。人形という単語に反応しただけ、でもあるような気もするが。
　蝋人形の男との触れ合いだなんて。こんな幻想的なものがあろうか。
　おまけにその男は、だんだんとぬくもりすら生まれる。夢の中で、という場面もいい。
　後、現実での男の人。植物園。飾ってある絵。どれも印象的。
　
・結晶体……インキュバスやらサキュバス、そんなくだりがちょびっとあったような。
　なんというか、果物は好まないのだけど。ネーブルが食べたくなる。みずみずしい、すぱっと切ったもの。
　服を着ると、中身を着ているような感じ……非常に生々しくてよかった。食器の話も。

・ラモーのガヴォット。曲を知らずとも、なにかしら旋律が頭の中で流れ出しそうな。
　アマデウスさん。特徴的な人だ。なんか記憶に残る。
　弟君の世話をする場面が印象的だ。汗の球が、つるって。つぅっという感じかな。
　これは秘儀の話内でしょう。

・内側の音。どんなに暗くしても、静かにしても、自分の内側の音が消えない……だったか。
　（読んだのはけっこうまえです）実際に実行してみたくなる。
　まっくらにして、ぐるぐる室内をひとりきりで歩いてみたい。ずっこけるのがオチだが。

・カメラ。肩にかけたカメラが、まるで武器みたいに光って見える……そんなのがあったような。
　そのくだり、妙に好きだ。その前に、お葬式というかおまいりのような部分も。
　控えめなパラソルと裏腹のカメラがいいよね。好きだ。


…………全体的にすごく好み。読み終わると不思議な感じに。
感覚にくるものがすごいので、たまにむしょうに読みたくなる。
覗き見るだけじゃなくて、飛び込みたいくらいだ。

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